大成荘 「廃止は止む無し」と判断します
あなたを守る社会をつくる
日野市議会議員の【奥野 りん子】です。
第三回定例日野市議会(11月25日スタート)の報告
大成荘の廃止条例に、以下の理由をもって、賛成致します。
大成荘は、昭和40年に開設された日野市の保養所・社会教育施設です。一般棟と団体棟があり、合わせて88名の収容が可能です。
55年前の開設当初は、家族旅行ができる安価な宿泊施設が不足していたために、自治体や企業が、福利厚生目的で、保養所を持つに至ったわけですが、その後、観光地における民間宿泊施設が増加したことや、少子高齢社会となった現在において、顧客獲得競争は熾烈を極め、大成荘の集客率は低下の一途を辿っています。
そうした経緯を踏まえ、この度、日野市が、大成荘の経営を閉じる決断をしました。
私は、民生文教委員ではないため、最終日の本会議場における質疑に臨み、公営企業会計において、無責任に赤字を垂れ流してきた日野市の姿勢を批判した上で、廃止条例には、賛成致しました。
質疑においては、教育的側面と経営的側面の二つの角度から、検証させて頂きました。
まず、教育的側面について述べます。
大成荘は、日野市内の小学5年生が、移動教室で利用する場となっています。大成荘が利用できなくなることでデメリットがあってはなりません。小学校長からの聞き取りをした結果、「八ヶ岳から離れてもらっては困る」というご意見を頂きました。八ヶ岳山ろくの地域で何を学ぶのか、教師たちが、長い時間をかけて、地元の歴史や差業や自然環境を調査し、教育実践する中で作り上げてきたカリキュラムを、壊す事だけはしてほしくない。」とのことでした。
この願いに関して、日野市教育委員会は、「大成荘の近隣に、自治体が運営する学習教育施設が4か所あるので、そちらの施設を代替する事が可能です。」と、委員会にて回答。すぐに、調査に入った結果、その4つの施設に関して、羽村市が少し離れているだけで、立川市、調布市、小金井市の施設は、すぐ側にある事がわかりました。
その近隣、4施設に関して、同じく小学校の移動教室を受け入れているため、アレルギー食も対応可能です。教育委員会からは情報提供の無い①収容人数、②食費含む1拍の料金についても、調べてみました。
自治体 収容 料金 距離
大成荘 88人 2400円
立川市 126人 2676円 指定管理
調布市 300人 2690円 委託管理
小金井市 182人 2310円 指定管理
羽村市 274人 4140円 指定管理
注 5施設とも、天体観測、卓球台、キャンプ・BQ、スキー客の受け入れが可能。大成荘以外の自治体は、体育館を併設している。
立川市は、キャパが126人と小さく、立川市の学校を優先的に受け入れるため、移動教室のシーズンである5月から10月までの間に、月火に一団体、水木に一団体と入れていくと、他市の学校は、必然的に、金・土の受け入れとならざるを得ないとのこと。
羽村市は、キャパ274人だが、来年度の予約は既にいっぱい。移動教室だけでも、近隣10市以上の注文を受けており、40団体以上が利用しているので、受け入れは難しいとのこと。
現時点で、受け入れに余裕があるのは、小金井市と調布市という事になる。「宿泊料金の差額については、補填されるのか?」という質問に、「そのつもり」という回答、「受け入れが可能かどうかを、施設ごとに確認したか?」という質問に対して、「小金井市と調整中」という回答が得られた。
「小金井は稼働率が低すぎるし、調布は、老朽化しているが、先行き、廃止の可能性は無いか?」という質問に対しては、「確認はしていない。」という事でした。「至急、確認すると共に、そうなった時の対応も、今から抜かりなく検討して頂きたい」。と、要請しました。
小学校の移動教室は、旅館やホテルよりも、社会教育施設である方が望ましいことは言うまでもありません。これからは、そうした施設に関して、広域経営の方向性も模索する必要があります。
次に、委員会では、誰一人、質疑の無かった経営努力に関して、述べます。
以前、大成荘の利用料の値上げ条例案が可決された際の質疑で、「あんな簡易な施設なのに値上げしたら、益々、客が減るのでは?」と質問したら、「経営努力を行ってまいりますので、大丈夫です」という回答がありました。「この間、どのような努力をして、どのような集客アップとなったのか?」という問いかけに関して、担当課は、一言も答えられませんでした。
他の4市の施設は、体育館や、カラオケ、サウナ、バドミントン、卓球、囲碁、将棋、などの設備を備えている。これらの工夫は、保養施設、社会教育施設として当たり前の集客努力です。なぜ、その当たり前の努力さえしなかったのでしょうか?
4市の状況は、調布のみ、委託管理で、後の3市は、日野市と同じ指定管理であり、指定管理先のレストランが、経営に関するノウハウを提供しているようです。ところが、日野市は、そのレストランと日野市の間に、企業公社を介在させ、その企業公社に、指定管理料7000万円を支払っているのです。
同じ指定管理でも、クリスマスパーティーを企画していたり、星空観測会の取り組みをしていたり、GOTOキャンペーンの指定を受けたりと、常時、集客のための工夫を行っています。また、他市は、コロナでも安心して泊まれるような対応をしっかりと講じて、受け入れを再開しているのに、大成荘は、経営回復に血道を上げなければならないこの時期に、閉めたままとなっています。
こうした状況を見るならば、日野市企業公社は、ただ、レストラン等の委託事業者との連絡調整をしているだけであって、経営努力というものを、全くしていないという事がわかります。日野市には、このような他市には見られない不適切な天下り事業があり、そこから、元市議会議員が役員報酬を受け取り取り続けているのです。
そもそも、この事業が、市民のためというのであれば、市民に利用して頂くために、真剣に考えた跡が見えるはずだが、その形跡が、全く見えない中で、大成荘の赤字は7000万円となっています。企業公社への中間マージン分が、そっくり、赤字となっているのです。経営ノウハウが全くないにもかかわらず、企業公社を指定管理先に指名している事こそ、赤字の原因があると言っても過言ではありません。
3年をめどに、職員の配置転換がある日野市においては、大成荘の経営に関して、黒字に拘り続ける人間は、一人もいないという事になります。ノウハウの無い自治体が経営に乗り出したら、赤字となるのは必至であり、絶対に、やるべきではありません。
かつ、「同じ地域に、同じような施設が寄り集まっていて、どの施設も、集客率が悪い」という現実や、「民間を加えれば、さらに熾烈な競争環境下にある」という現実を鑑みれば、今後、大成荘は、人口減少社会が到来している下で、どのようなテコ入れをしても、赤字体質から脱却する事は、困難であると推察します。
コロナの収束の目途が付かず、先行きが見えない中で、どんなに自助共助と言って、福祉には財源を回したくないという日野市の思いがあっても、自治体の持ち出しは、増えていく事になるはずです。大成荘への赤字補填分は、一刻も早く、貧困にあえぐ市民への救済に回すべきと、考えます。それこそが、真の行革であると申し述べて、賛成の意見といたします。